自分はお世話になったことはないけれど、空港で "lost and found" を見かけるたびに、英語ってシンプルだなと頷いてしまう。「遺失物取扱所」と言われるよりなんだか lost and found だと、なくしちゃったけど見つかる感じもしませんか。

人間は忘却の生き物です。忘れないと新しいことを覚えられないという許容量の問題だけでなく、意図して忘れ去りたいことも多い。忘れたくない、忘れてはいけないこともたくさんある。ここは忘れっぽい自身の日々の「公共備忘録」です。また、立ち寄ってくれた方たちがここで何か発見をして、喜んだり怒ったり哀しんだり笑ったりしてもらえれば幸いです。

《 NOTICE 》ちなみに今はもっぱら脱原発ブログとして展開中であります

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2011/05/24

日々是被ばく(サンプル市民)

昨日 5/23 、福島のお母さん、お父さん、子どもたち(100人近く)と彼らを応援する人々(300人近く)が文科省前に集合し、福島の子どもたちの年間 20mSv(ミリシーベルト)の許容値の撤回を求めました。自然界や医療で年間に受ける放射線量(大体 2-3mSv)を除いて、一般人が人工的に受けてOKとされるのは年間 1mSv。20mSv 以下ならば日本では学校に行かされてしまうけれど、チェルノブイリでは年間 5mSv で強制移住。大人よりも放射線の影響を受けやすい子どもの被ばくを最小限に抑えたいというのは誰しもが思うこと。そんな当然の、そして悲痛な訴えに対して、高木文科相と政務三役が交渉に出てくることはありませんでした。


詳しくは:

毎時 3.8uSv(マイクロシーベルト)というのが出てきたのでメモとして:原子力委員会が示した考え方に基づいて(ここがすでにあやしい)8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすことを想定しての被曝許容基準 per 1時間。これで 365日計算をした場合は 20mSv を下回るが、いずれにせよ 10mSv 前後となり、これでも高め。また、3.8uSv/hour にしても 20mSv/year にしても食べ物からの内部被曝は含まれていない。厚生省が「この暫定基準値に基づけば、飲料水と食品の摂取だけで、1年間で 17mSvの被爆(実効線量)になると認めた」との情報もある。

高木文科相は「ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づいたもの。年間 20mSv はあくまで上限で、1mSv を目指して線量の軽減を図っている」と言っていたけど、その 20 という線量限度の数字によって校庭(除染されていない)での利用のあり方が決められてしまったりしていて、しかもそれを大人も子どもも一緒にされてしまっているというのが問題とされています。そしてこの ICRP (こいつがどのくらい中立で信頼おける機関かもまずチェックした方がいい気もするけれど、それはちょっとおいといて)ですら、なにも 20mSv にせよと言っておらず「1〜20間(復旧期/平常時より線量が高く汚染状況下での基準数値)でできる限り低いレベルで」、それに「妊婦や子どもには特段の配慮を」、と言っているらしい。1〜20 のわざわざマックス上限をとっているのは日本政府なのです。しかも ICRP は内部被曝を積算していない。

オーストリアでは原発が違憲だそうです。日本でも原発は憲法 25条に反するという意見もある(第25条;すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する)。うん、今の福島を考えると憲法違反。そう、普段の 20倍の放射線量まで強要されるのは人権的、人道的にどうなんだろうか。小佐古内閣参与がこの政府の決定を受けて「ヒューマニズムに反する」として辞任したのも人として当然というか・・・。それに福島大学の教員グループが「低線量被曝リスクについて」という文書を発表していて、その中で「我々は誰しも "サンプル" にされない権利を有しているはずです」と言っているのが胸に刺さりました。直球に言うならば「福島県民は被曝実験のモルモットではない」ということです。そんなこと、絶対に許されてたまるか。

先ほど、河野太郎議員が「昨年の文科省調査によると年間 20mSv は危ない」という貴重なブログポストもされていますね。

文科省が 4月に「放射能を正しく理解するために - 教育現場の皆様へ」なるものを配布しています。文書の半分が「放射能を心配し過ぎて起こるストレス障害について」書かれていて、苦笑するしかない感じ。おーい。文科省がストレス増大させてんスけどー。暴走がとまりません。

放射能の影響は確定的でない部分もあるけれど、浴びるか浴びないかならば浴びない方がいいわけで、それについて予防原則的措置をとるのは、特に影響を受けやすい発達途中の細胞を持つ子どもには、当たり前だと思います(この可能性は高いが確定的影響がクリアでないという中での「予防原則」を!というのは遺伝子組み換え作物の問題などにも言えます。ちょっと脱線)。もうね、とにかく予防原則なんだってば。チェルノブイリという前例があり、それと同レベル(原発の基数で言えば「チェルノ x 4 + 始末の悪いMOX燃料 + だらだらと放射能垂れ流し終息の兆しナシ」を考えると、たぶんチェルノ以上。史上最悪)な中、様々なことが予測できるのに、国民を守るために何も講じない政府。そしてここまでのことが起きていて、進行中にもかかわらず存在する膨大な無関心層。様々な事情を抱えて動けない人もいるだろう(でもそんな何らかの差し迫った状況にいる人はわずかだと思う)。十年後、身の周りで何が起きていようと、今何もしなかったなら文句を垂れる資格はないんだよ。

「この世界を危険に導くのは、悪事を働く人たちよりも悪事を見過ごす人たちである」
- Albert Einstein

【 追記 5/26 】
あと、前出の文科省が出した「放射能を正しく理解するために」にあまりに間違いが多いため赤を入れた(添削した)版をつくってくれた人がいます。赤ペン先生っ。

【 追記 5/27 】
福島の子どもたち 2omSv 問題に進展!高木大臣が会見で「年間 1mSv以下を目指し、できるだけ減らしていく」と。でもまだ 20mSv は見直されていないので、手放しに喜べないようだけれど、とにかく前進。

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