自分はお世話になったことはないけれど、空港で "lost and found" を見かけるたびに、英語ってシンプルだなと頷いてしまう。「遺失物取扱所」と言われるよりなんだか lost and found だと、なくしちゃったけど見つかる感じもしませんか。

人間は忘却の生き物です。忘れないと新しいことを覚えられないという許容量の問題だけでなく、意図して忘れ去りたいことも多い。忘れたくない、忘れてはいけないこともたくさんある。ここは忘れっぽい自身の日々の「公共備忘録」です。また、立ち寄ってくれた方たちがここで何か発見をして、喜んだり怒ったり哀しんだり笑ったりしてもらえれば幸いです。

《 NOTICE 》ちなみに今はもっぱら脱原発ブログとして展開中であります

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2011/06/19

続々・食べ物ノート

小出裕章先生のコメントがやっと民放で流れるようになりました。原子力の専門家でも脱原発側の学者の警告はとりあげてこなかったマスメディアが徐々にその姿勢を変えてくるのも、事態の深刻度のバロメーターでしょうか。

(テレビ朝日・モーニングバードより 19分の動画)
このインタビューで小出先生は、炉心の水はなく、まともに冷やすこともできていない状態で、解け落ちた燃料が地面を溶かしながら下へ下へと進んでいっているのではないかと言っています。そうなるとドロドロの核燃料が地下水に触れ、水脈が汚染されることに繋がります。それが起こっているのではないかというサインが、2号機周辺の地下水からストロンチウム90 が国の基準の170倍も検出されたこと(保安院は3号機の水素爆発によって出たストロンチウムと報告)。どこかで読んだのですが、地下水脈というのはどのように全国に広がっているのか完全に把握ができていないそうで、原発真下の地下水が汚染されて流れ広がったとして、どこかで食い止めることができなければ、海に流出するだけでなく、広範囲にわたって日本の水が汚染されてしまう可能性もなきにしもあらずなのです。それはもう始まっているかもしれない。この危機感をどのくらいの人が持っているでしょうか。

チェルノブイリのあと、オーストリア政府の調べでは圧倒的に大きな被曝 (80%) が食品からのものだったそうです。次に重要なのは地面の汚染に起因する外部被曝 (15%) 。「このデータは地域によって多少異なるだろうが、汚染食品の重要さは変わらない」(「食卓にあがった放射能」高木仁三郎・渡辺美紀子 著)。今日は食べ物に関して集めた情報を紹介します。

依然、高い暫定基準値は変えられていません。そして汚染の測定も、きちんと測って流通しているのは野菜の 0.1% に過ぎないとか。1000本のキュウリのうち 1本しか検査されていないことになります。結果は発表されているようですが、検査プロセスなど確かに不透明。全量調査ができないのは分かりますが、現状では「どれが基準をパスしたもので、どれがしていないか」わからない状態で市場に出ていて、しかもその暫定基準が異様に高いときている。いずれにせよ、検査を経てパスしていたって危険な可能性が高いのです。福島産でも、本当に検出されなかったものがあるなら、それを買いたいのに(どこよりも被災地のものを本当は食べて支援したいのに)、今のシステムでは「食べて支援」は危険を伴います。また、今は畑の表面が汚染されている状態で、洗っても落ちる(実際よく洗って「基準値以下」となり、市場に出ているものもある)。問題は来年以降は洗っただけでは落ちないものが出荷されるということ。雨で土壌の表面にあった放射性物質が土中に浸透する、その汚染土の養分を取り込んで野菜が育つ(汚染エリアの作付けについてや 99.9%の野菜が未検査な件のソースなど、上記のリンクで言及されています)。関連して、「食品の調理・加工による放射性核種の除去率」(原子力環境整備センター)というちょっとマニアックな論文調の読み物を発見したのですが、カタくて読み込めていません。ご参考まで。

1週間ほど前に表参道のクレヨンハウスであった勉強会「食べものと放射線のはなし」を、覚え書きとしてまとめてくださった方がいます(まとめの Togetter)。はじめて学ぶ方にはわかりやすく、ちょっと詳しくなっている方には要点をとらえたおさらいになっていて、おすすめです。上記のおさらいと同様に「放射能汚染からの自己防衛の食事」というまとめも非常に参考になります。ふたつとも、食生活のキーポイントとして「取り込みを防ぐこと」「排泄を促して蓄積させないこと」、さらには「体質を丈夫にして免疫機能を強くすること」をあげています。排泄を促進する食べ物としてりんごや柑橘類に多い「ペクチン」(ジャムなどにも入っているやつですね)は放射性物質を絡みつけて排出する働きがある、などなど、具体的な情報が詰まっています。

その他、いくつか情報サイトを列記します。
・魚に関する汚染の情報
(年齢別というところが新しい・・・って、なんかちょっとマニアっぽくなってきて自分でも今ちょっと引いた)

6/8 に出された在日フランス人向け公報 IRSNは「福島県周辺地域における土壌と食品の汚染、続く」として、以下のような勧告を出したそうです(以下、一部)。
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【一般のフランス人への勧告】
・ 生産地や放射線濃度が分からない生鮮食品(特に葉野菜、キノコ類、魚類)については長期間の摂取を控える。福島原発事故の後で生産された茶葉についても同様。
・ 同様に、福島、栃木、茨城、宮城、群馬、埼玉、東京、神奈川、千葉の各県で穫れたタケノコやクサソテツを摂取しないこと。
・ 福島、宮城の両県で生産された生乳や、生産地・放射線濃度が分からない生乳を長期間子どもに与えないこと。
【宮城、茨城、栃木、福島に暮らすフランス人への勧告】
・ 乳児および幼い子どもの食事にはボトル入りミネラルウォーターを使用すること。
・ 自宅の家庭菜園から収穫した野菜や、家庭で飼っている家畜動物を食用に用いるのを最大限に控える。
・ 野菜や果物を食べる前に注意してよく洗うこと。外部から建物の内部に汚染物質を持ち込まないよう、家庭での衛生状態を良好に保つようつとめること。特に、下記に注意する。
・ 雨の日は靴を家の中に持ち込まない。
・ 濡れた雑巾で床を定期的に拭く。
・ 家具、カーペット、敷物の表面に定期的に掃除機をかける。掃除機の中袋を定期的に交換する。
・ 無意識に手が口に触れて汚染が起きないよう、ポンプ式容器に入った液体石けんで手を定期的に洗う。
・ 幼い子どもが遊んでいて戸外の土や砂を口にいれないよう、常に見張っていること。
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なんで日本人が在日フランス人向け公報を頼りにせなあかんのだ、と思いますが。

今回の投稿の他に、以前書いた「日々是被ばく(食べもの)」「続・食べ物ノート」にも放射能汚染と食品についてまとめてあるので、そちらもよかったらご参照ください。

【 追記 6/21 】
横浜のお母さんお父さんの市民グループが、食べ物関連をはじめ、しっかりとしたまとめサイトをつくられています。
横浜パパママ放射線だより(横浜の子供たちを放射能から守る会)

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