自分はお世話になったことはないけれど、空港で "lost and found" を見かけるたびに、英語ってシンプルだなと頷いてしまう。「遺失物取扱所」と言われるよりなんだか lost and found だと、なくしちゃったけど見つかる感じもしませんか。

人間は忘却の生き物です。忘れないと新しいことを覚えられないという許容量の問題だけでなく、意図して忘れ去りたいことも多い。忘れたくない、忘れてはいけないこともたくさんある。ここは忘れっぽい自身の日々の「公共備忘録」です。また、立ち寄ってくれた方たちがここで何か発見をして、喜んだり怒ったり哀しんだり笑ったりしてもらえれば幸いです。

《 NOTICE 》ちなみに今はもっぱら脱原発ブログとして展開中であります

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2012/03/19

「人を助けるすんごい仕組み」

311 の国会包囲のヒューマンチェーンの抗議行動の帰りに、一冊の本を購入しました。ものすごく疲れていたのだけど、この日に買わなければならないと、ぐったりした体にムチ打ちつつ本屋へ。

「ふんばろう東日本支援プロジェクト」という全ボランティア(組織という組織はない有志の集まり)の被災地支援のプロジェクトについて、その代表である西條剛央さん(早稲田大学大学院 MBA 専任講師)が書かれた
というノンフィクション本。311 の数日前にとあるビジネスの行動心理学関係のメールマガジンで紹介されていたのに遭遇して、強く引きこまれました。糸井重里さんの帯のコメントの通り、震災の状況だけでなくあらゆる仕事の場で、間違いなく役に立つ本です。わたしが読まなければと思い立ったのは、先日も書いたように福島・原発・放射能の問題は日々考えてきたけれど、津波被災地のことはよく知らないと気づき、知りたいと思ったことと、上記のメルマガ内での内容の紹介で「凄まじい被災地の描写に対して、いちいち感傷に浸っていられないほどのものすごい「行動の集積」によって不可能そうなことを可能にしていく」という一行に、詳細をとても知りたくなったからです。わたし自身も感じていた、行政の危機対応のスピード感のなさや、団体・組織が大きくなればなるほど遅くなる決断や動き。それらの対極で、動きの鈍い行政や団体をすっとばして支援者と被支援者を直接つないで成功したというアクション。最近、西條さんはこの迅速で効果的なプロジェクトの結果を評価されて、日本赤十字社に助言を行う立場に。

その、本を紹介されたメルマガの中での「世の中のほとんどの "言い訳がついつい口から出てしまう人" はヒマなのだ(略)ヒマだから決定しないという決断をくだし、面倒なことは先送りにして、後から指摘されると無意識のうちに言い訳をする」という一文も「あ、自分やん」ということでギクっとしました。そして「本書で紹介される、プロジェクトに関わる人たちに、誰一人としてヒマな人はでてきません」と。(偶然出会ったこのメルマガ(上記リンク)も結構必読なのでご一読ください)

この本は 311 のあの日からはじまり、仙台で叔父さんを亡くされた著者が南三陸町に行き、プロジェクトを立ち上げていく過程を描きながら、有事にこそ有効な「構造構成主義」の考え方がポイントとして出てきます。カタそうですが、その時々の「状況」「目的」を把握し、それに合わせて方法論を決めるということ(聞いた感じ当たり前の)、それをしっかり行うだけ。いろんなことに通じると思うのだけど、目的って段々ブレていくんですよね(だから確認は大事)。こういったヒントや、昨今のソーシャルネットワークを使って具体的に人々が繋がっていった/繋げていった支援の "すんごい" プロセス("すんごい" ってホント糸井さんぽいなぁ)。一気に点が線となった、プロジェクトに関わった本当に多くの人たち。そして津波の爪痕、メディアが伝えなかったリアルな惨状、奪われかけたいのち、奪われたいのち、それを乗り越えて強く生きている方々の暮らし、気持ちが出てきます。そしてずっと原発のことはずっと出てこないのですが、最後の最後に【原発問題の解き方と答え】という項があり「原発は是か非か」ではなく、双方の関心を織り込む形で「原発をなくしても問題が生じないようにするには、どのようにすればいいか?といった形に問い方を根本的に変えるという点が重要、などと述べられていて、そののちに、様々な現実的な状況を鑑みて、原発に頼らない社会へ進むべきと(というか「答えは出てしまった」と)書かれていました。また「個々人レベルでは誰もがおかしいと思っているのに、一部の利権などから社会や組織全体は反対方向に進んでしまうという現象は、組織が死に至る病」だと。これを聞くとまた戦時中の日本政府とかぶるなぁ。

驚く数のプロジェクトを行われた西條さんが、最後に「特別なことは必要ない。本当は絶対によくないと思っていることはせず、こうすれば社会はよくなるのにと思っていることをするだけで、僕らは確実に幸せな社会に近づいていくことができる」/「一人ひとりの力が合わさることで、世の中は変えられるんだということを広めていきたい。それが子どもたちのための未来をつくる、僕らの役目だと思っている」と言われると、エネルギーをもらえます。

この本の印税は全額復興支援へ使われるそうです。今一番おすすめの本です。

(本のページの端っこを沢山折りすぎてしまったために、かさが増えてしまった・・・。忘れたくないセンテンスを書き出しておきたいのだけど、毎回「一回の投稿長すぎ」というクレームもある(?)ので、それは次回に。)

ふんばろう東日本プロジェクト "誰でもできる復興支援はここにある" は継続中です。

【 3/19 追記 】この本を読んだ理由のひとつに、津波被災地のことをもう少し知りたいというのがありました。その点でも、この本から知ったことは多かったのですが、先日「母を捜して -陸前高田から - 」というとあるカメラマンさんの実話を記録したサイトを見つけ、そこでも津波で家族を失った方々のリアルな日常が綴られていて衝撃を受けました。ここに共有したいと思います。綴られているショッキングな出来事が彼だけでなく何千という方々に同時に起こったということが、いまだにうまく想像できません。ただ、知ることはできるから。

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