◆ 結局は「どう生きるか」という問題
「この悲惨な出来事を肯定することは決してできないけれども、あの出来事があったからこんなふうになれたのだ、と思うことはできる。それが僕らの目指すべき未来なのだ。(略)起きた出来事は変えられないが、
出来事の意味は事後的に決まる。」
◆ リミッターを外すしかない
「すべてを失っても前を向こうとしている人がいる。何も失っていない僕らがやる気になれば、何だってできるはずだ(略)未曾有の事態には、未曾有の自分になるしかない。」
「構造構成主義の「方法の原理」によれば、方法の有効性は(1)状況と(2)目的に応じて決まる。そのための有効な方法がなければ、つくればいいのである。」
「最初に『このやり方じゃ無理だな』とか『ラチがあかないな』と直感したことはやりませんが、基本的な方向性として『いける』と確信したら『できるかどうか』という問いは立てません。『無理だ』とか言ってあきらめることは、いつだってできます。だから、それは最後の最後でいいんです。」
◆ 行政の壁、前例主義と取引コスト
「(行政は)断るという結論が先にあって、そのための理由をいろいろとつけているだけだったり、各部署をたらい回しにすることで話が一向に進まない --- なぜそのようなことが起こるのだろうか?(略)(行政が何かをするとなると)「責任」が生じる。前例があれば、何か問題が起きても「前例に従ったまでです」と前例のせいにできるが、ない場合は新たな仕組みを導入した当人までが責任を負うことになる。それを回避するために、前例がないから、と言って拒否することになる。 --- こうして「前例主義」が組織を蝕んでいく。(略)行政や大企業のような保守的になりがちな組織においては(新しい試みについて)周囲の人を説得するための「取引コスト」は膨大なものになる。他方で、新たな試みをしなければ、そうしたコストはかからない。リスクも責任も生じない。そのため、実現する努力をすることなく、やらない理由を探すことになる。
◆ 全員を公平に不幸にする「公平主義」
「有事においては「公平」が方法概念であることを忘れ、それ自体の遵守にとらわれることで、すべてを失った被災者をさらに苦しめることになった。それはこれまでの慣例とその成功体験、そして不公平な扱いに対して過度に敏感な市民からのクレームによって、行政は公平主義に染まってしまったため、と考えられる。(略)そもそも本来の行政の共通の目的は何かと問えば、それは市民を幸せにすることのはずだ。」
◆ 横のラインが社会を変える
(ツイッターについて)「政治って結局世の中を動かすことで、いままでは縦のピラミッドの上の人がパワーで動かすという図式だったと思うんですが、今回初めて横のラインでつながった(略)政治家の人もツイッターに入っている限り、そこでの話題や自分宛の言及(メンション)は気にせざるをえないということ。布のは端切れをもってしまったようなもので、影響を受けざるをえない。これはある意味で直接民主主義に近い形」
「例えば、原発を推進しようという人には絶対に票を入れないようにしよう!と大々的にキャンペーンを打つことで、原発推進なんて用意には言えなくなる。東電は上からのパワーでコントロールしてきたわけですが、横がつながって "市民意思機能体" として違う軸でのパワーを持てば、それにコントロールされることなく、市民が本当に考えていることを実現できる。」「2011年1月以降に、中東や北アフリカで革命が起きたのはおそらく偶然ではない。ツイッターとフェイスブックが統制不可能な横のラインをつなぐインフラとなり、難攻不落の独裁国家がひっくり返ったのである。(略)状況が違えば、いままで有効ではなかった「一人ひとりが声をあげる」という方法が有効になることもある。今までは声をあげても無駄だったかもしれないが、状況が変わったと言っていいだろう。」
「一銭のお金も動いていないのに、みんなが、なんとかしたいという気持ちで動いている」
◆ 強い意志の継承 --- 腐敗した組織に対抗する唯一の希望
「理想主義から入ると、それが崩れたときに、その反動で懐疑論やニヒリズムに陥ってしまうからです。人間も社会も完璧になるということはありえませんから、理想主義はいつか崩れます。だからニーチェは、いわば戦略的ニヒリズムという考えを打ち出します。あえて真理も完全な社会もないというニヒリズムを出発点とすることで、それでもいまよりはマシにすることはできる、といった形で、最終的にニヒリズムに回収されないようにしたわけです。時間を止めて固定的に考えると、一人ひとりの力はあまりに小さく無意味なように感じてしまいますが、時間というファクターを入れて考えるとそんなことはないとわかります。僕らですべてを完成させる必要はないんです。(略)僕らが少しでも進めておけば、そこを出発点として、子どもたちが、次の世代がさらに進めてくれる。」
◆ 5% にこだわらず、95% のところで迅速に動く
「税金も使っていなければ、給料ももらえない、守るものなんて、ないんですね。被災者支援のプロジェクトなのに、ごく一部の批判を気にして、助けられるたくさんの人たちへの支援をやめてしまったら、某行政と同じになる。(略)どんなことをしていても批判をする人はいますし、失敗する可能性もある。だから、常に完璧を目指すのではなく『5% は大目に見よう』と。」
「人間は 95% の人が賞賛してくれても、5人批判する人がいると、批判する人の意見にフォーカスし、20倍くらいの重みづけをしてしまう。そうすると批判者の意見に引きずられて、意思決定を謝ってしまうのだ。」
◆ 目的を常に共有
「目的を共有することは、活動が目的からブレないためにも重要となる。これは当たり前のことだが、実際にそれを徹底できることは稀と言っていい。」
◆ クジラより小魚の群れになろう
「クジラは巨大な図体ゆえに容易に方向転換することはできない。しかし小魚の群れなら、一瞬で方向を変えられる。僕らは一人ひとりは小さな魚でも、群れをなすことで、クジラに匹敵する機能を備えることができる。しかも、刻々と変化する被災地においては、魚の群れのようにときにまとまり、ときには細かく分散して、融通無碍に対応できるほうが、機能するのだ。」