暫定規制値について、いくつかメモです。規制値の正式な改訂が年内に行われると決められたようですが、もうそんなもん誰もあてにはしていません(個人の指標としてはあてにしていないんだが、それに従って学校給食がつくられたり食品の流通が行われていることが問題なんだな)。厚労省は、暫定基準で年間5ミリシーベルトとしている放射性セシウムの年間被曝限度を、新基準値では年間1ミリシーベルトに引き下げる方針を出して、乳児用食品の項目も加えるとのこと。ある程度は評価できるのかもしれませんが、大人の食べ物と同じ材料で離乳食はつくられるわけだし、「乳児」は考慮して「幼児」は無視(大人と同じ)なのは、現実の食生活のケースをきちんと想定しているのか?という印象です。また、この累計の被曝量(年間1ミリ限度)はそれぞれの外部被曝量や、汚染された土壌や枯れ葉の土ぼこり・粉塵を吸いこむなどの内部被曝量は含まれていないし、東日本ではこの「換算されていない分」の被曝はほとんどの人がしています。これを言ってはおしまいだけど、もともと基準自体も流通前の検査で厳しく守られていなければなんの意味もないものですよね。わたしはそこを疑っているので、規制値のニュースを聞いてもフワフワと浮いたどうでもいい話にしか聞こえないのです。
この食品の放射線量の規制値は、チェルノブイリ以降の汚染を被った国々でも当然設定された(されている)わけですが、ベラルーシの規制値をめぐることについて少しご紹介したいと思います。ベラルーシはチェルノブイリ原発事故で国土の23% が深刻に汚染されました。その中でどのように人々の健康を守っていくのか、ベラルーシでは様々なノウハウが蓄積されていくことになりました。政府も(現在の日本のごとく)当初対策がまったくなっていないばかりか、ひどいもので、その中で市民が立ち上がり、自分の身は自分で守るしかないと努力がなされてきたようです。
先日、ベラルーシから学ぶ食品の安全管理というような、とてもいいお役立ちコラム(NHK が放映したものの動画)があったのですが、youtube からは既に削除されていました・・・珍しく NHK が役立つこと言ったと思ったらこれだよ(残念)。覚えている限り、そこで NHK の石川解説委員が説明されていた、ベラルーシの食品の安全管理で特筆すべきなのは、検査体制と生産現場が太く結びついているために、汚染食品がどんどん減っていったということです。それは例えば、食肉で高いベクレル値が検査機関で出たなら、生産元と密に連携し、何が原因でそういう数値が出たのか、エサか?環境か?出元を徹底調査して対策をすると。そこのラインがしっかりと繋がり動くことで、汚染食品は結果減っていき、基準値もそこの状況と見合わせながら(汚染が減少されたと見なせるものは)低くされていった、という経緯があるということでした。日本のように適当に決めた値じゃないんですよね。ちなみにベラルーシでは、全国で公立・民間含めて 860カ所の食品放射能測定所があり、市民が普通に計測しながら食品を購入しているとのこと(その様子も映されていました)。
また、ベラルーシのベラルド放射能安全研究所の副所長、バベンコ氏も「25年前に不幸な事故に遭った国の人々の知恵に学ぶしかない」と、先月講演で伝えています(「自分と子どもを放射能から守るには」講演と一部文字起こし:規制値問題、食品の除染対策などにも触れています)。ベラルーシやウクライナなどのチェルノブイリ事故下の状況と今の東日本について、様々な比較がなされますが、特に食にまつわる状況と内部被曝については簡単に同じと思うべきではないなと、わたしは考えてきました。食文化(日常的に食べる物)や人種の体質、食品の調達先や経済水準とグローバリゼーション(ウクライナでは 1000Bq/L を越えた牛乳を日常的に何年も飲んでいたなど、地産地消の農村が非常に多かった − わたしたちが今している地方からのお取り寄せをネットでオーダー+輸入食材の豊富さもない)、溢れる出来合いの加工食品やレストランの数は逆に今の日本の方がリスクはあるでしょうが。そして、今のわたしたちには当たり前のウェブによるの情報入手・共有なども、当時のチェルノブイリ下の市民にはなかったことです。こういった差異で生まれるリスクもあれば、その逆も、ということを考えると、被曝の度合いなどは比べられない。ここで、チェルノブイリと同様に考えられないから大丈夫、なのではなくて、同じにはならないからこそ怖いのだと思う。そもそも違う事故なんだし(つーか、福島は MOX 入り複数基メルトスルーだかんね)。しかしながら、放射能がばらまかれて食べ物が汚染されたというケースは同じこと・・・言いたいのは、その中で人々が努力して培った対策についてはとことん知るべき、学ぶべきだということです。
脱線ですが、解説委員情報:(NHK の解説委員に注目するのは科学文化部の水野解説委員以来!)前出の石川解説委員は、ベラルーシをはじめ、ロシアのエキスパート。風貌も芸術家風で注目なのですが、最近除染や食の安全などについての的確な解説が増え「チェルノブイリ後にベラルーシ、ウクライナ、ロシアで蓄積された知見をどのように日本で活かしたらよいか、少しでも役に立ちたい」と発言されていて、今後期待です。
【 追記 11/26 】
先ほど、福島市内で収穫されたお米から最大 1270 Bq/kg という暫定基準値を飛び抜けて越えているセシウムが検出されたニュースが。5kg の米袋ならば 6350 Bq(放射性廃棄物かい・・・)。「市場には流通していない」とされていますが、絶対に絶対に流れていないことを祈ります。誰もそこんとこ保証してくれないのだけど。
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